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■アナイス■「いろんなものから遠く離れて」 2009.8.31

Aこのところ夜はずっとアナイスに寄り添って眠る。

アナイス、私の理解者私の分身私自身。……こんなふうに自由に書くことの快楽。

何度も登場している「インセスト アナイス・ニンの日記」を、またしても読み直しているだけのことなのだが、やはりアナイスは私にとって特別な人。

昨夜は次の部分が痛いくらいに染み入って、暗記するほどに何度も何度もたどってしまった。

***

寂しくてしょうがない。

私がいつもヘンリーにしてあげているようなことを、私にしてくれる人が欲しい。

私は彼が書くものはすべて読む。彼が読む本は私も読む。彼の手紙には必ず返事を書く。
彼の話を聞き、言ったことをみんな覚えている。彼のことを書く。彼に贈り物をする。彼を守る。彼のためならいつだって、誰だって諦められる。彼の思考をたどり、参画する。
情熱と母性と知性をかたむけて彼を見守っている。

では彼はどうか。私のために、彼にはこんなことはできない。誰にもできない。誰にもそのやり方がわからない。私の才能、私が生まれながらに持っているものだ。

ヒューゴーは私を守ってくれるが、応えてはくれない。

ヘンリーは応えてくれるが、私の書くものを読む時間がないし、私の気持ちをこまかく察してもくれない。私のことを書いてもくれない。

父は女と言ってもいい思い遣りはみせてくれるが、私の仕事には関われない。

私に与えられるものは不完全な、不満足な、焦燥をそそる断片だけ。

だから私は寂しい。
だから日記のなかで私は私が欲しい応えを書き綴る。
自分で自分を養わなければならない。

私に愛は与えられる。だが、愛だけでは充分ではない。

どのように愛するかを誰も知らない。

***

アナイス。貴女の強烈な自己愛を私は強烈に愛する。

夏が終わった軽井沢、最後の緑に妙な生命力を感じる日。

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